未来の幸せを願う、梅本農場の有機野菜づくり

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「オーガニックというのは、『農薬を使わないこだわりの野菜栽培』だけではない。多様性を互いに認め、受け入れて共存し、次の世代の幸せを願うこと。その想いの延長線上に、私たちの野菜づくりがある」と話すのは、ビオ・ラビッツ(株)の梅本 修さん。約18年間、野菜の有機栽培を京丹後市弥栄町黒部で続けてきた。2020年6月には、自社のオーガニック野菜を使用した料理を提供するカフェ「Organic Cafe てんとうむしばたけ」を、シェフのビオ 対馬(対馬 則昭)さんと協力してオープン。野菜の栽培から食事の提供まで一貫したオーガニックスタイルで運営している。

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生き生きと伸びる、パプリカの畑。農場長の井上さんと共に収穫どきのパプリカを探す。

有機野菜農家になったきっかけ

 農家を始める前は、東京都内の企業の宣伝部門で、高校生をターゲットにしたインスタント食品のコマーシャル制作を担当していた。その当時は食生活やオーガニックということに特別な意識があったわけではなかったため、高校生に売り込むためのCM制作に、何も疑問を持っていなかったそう。
 梅本さんの意識を変えたのが、自身に長男が生まれたことだった。親になった時ふと思ったのが、「この子が高校生になったとき、親として栄養価が偏るインスタント食品を食べさせたいだろうか」自分の心に嘘が付けない梅本さんはサラリーマンを辞め、子どもに食べさせたいものを作るために野菜農家になることを決意した。「予定をしていたわけでは無かったから急ではあったけど、あまり悩まなかったね」と梅本さん。
 地元が京丹後市の隣の宮津市だった縁があり、この丹後の地で就農することになったが、最初は有機栽培ではなく慣行栽培を行っていた。ところがある時、またふと疑問に思った瞬間があったという。「農薬にまみれた野菜を自分の子どもや他の子には食べさせていいのか」それはサラリーマンを辞めた時に感じた気持ちと同じだった。「全てを有機野菜にしよう」と決意して、梅本さんの有機栽培は始まった。

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落ち葉や草を集めて作る、梅本農場の土。有機野菜の栄養の源。

土づくりから始まる梅本さんの有機栽培

「オーガニックの野菜をつくるということはつまり、人間の都合ではなく自然界のルールに従って野菜をつくるということ。それに不可欠なのが『土』なんです」と、梅本さん。自然の山にある、さまざまな生き物や植物の命の循環でできた土を再現するため、近隣の山の落ち葉や河川敷の草を大量に(軽トラ約1000杯分の量!)集めてきて3~4年放置する。そうしてできた土を畑に撒いて、野菜を栽培する。梅本さんの畑の土壌はまさに、野菜が生き生きと成長するのに最適なものとなっている。
 梅本さんの畑で育つ野菜の最大の特徴は、自然の中で生き延びる生物本来の強さを持っていること。草も虫も、本来は野菜と共存すべき存在なのだから、自然な形で育ててやれば喧嘩をすることもない。「そうやって虫も植物も、動物も人間も、多様性がある世界で認め合い共存できることが、私たちが考える『オーガニック』という物の見方の原点なんです」と梅本さんは語る。
 実際に梅本さんの畑には草も虫も共存していて(もちろん必要に応じ草取りをしている)、よくイメージするきれいに整った広大な農家の畑とは違う。しかし、その中で伸びる野菜はどれも力強く、土からの栄養を存分に吸い込んで育っていることを一目で見て取れた。

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つやつやと美味しそうなピーマンが顔を出している。

本当の食育を。子どもたちが変わったら、親が変わり、学校が変わった

自然の力を持った強い野菜を地域の子どもたちに食べて育ってほしい、と願う梅本さんは、京丹後市の学校給食にも長い間関わってきた。それは給食への野菜納品の域を超え、食育にも広がっている。
 有機栽培を始めた当初、米、野菜、魚が採れる京丹後の地で、学校給食に地元産の食材がほとんど使われていない(米に関しては当時から100%京丹後産)事実を知った梅本さんは、有志の農家の仲間たちと「学校給食委員会」を立ち上げ、地産地消の給食の日を作るよう地域の学校に働きかけてきた。念願が叶った約10年前の地産地消の給食の日、1番の驚きだったのは子どもたちの反応だったという。初めて出会う農家の人たちのかっこいい姿に、子どもたちはいつもと違う好奇心に満ちた表情を見せた。野菜が嫌いな子どもも、その日はしっかりと食べ切った。その体験は子どもたちの口から親へ伝わり、親からの「もっとそういった取組をしてほしい」という声に学校側が動くようになった。そして現在では、毎月19日の「食育の日」の前後1週間は出来る限り地元の食材を使った給食が出されるまでに定着した。
 その時の子どもたちは、今では高校生~大学生になっていて、中には「農家を目指す」と梅本さんのところへ訪ねてくる方もいるという。梅本さんの想いは、さまざまな形で子どもたちに確実に届いている。

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色とりどり、個性豊かな野菜たち。これからお料理に変身。

今の時代の忙しい家庭にとって、オーガニックをもっと身近なものに

自然と人々を繋ぐ場所を作りたいという長年の想いから、その形の1つとして2020年6月、「Organic Cafe てんとうむしばたけ」を農場のすぐそばにオープンさせた。ここではシェフのビオ 対馬さんが、その日に採れた野菜が一番おいしく食べられるメニューを考えてランチを提供。また、自社栽培の野菜をふんだんに使用したドレッシングやポタージュ等の加工品の製造・販売も同時に行なっている。このお店は、オーガニックというライフスタイルを全うしてきた、梅本さんと対馬さんの集大成の形でもある。
 対馬さんは、季節と命が巡ることを料理で表現したいという思いで、スタッフの皆さんとメニュー・加工品開発をされている。「健康や食品についての情報が溢れる現代では、何が正しいのかを選ぶことが人々にとって難しくなっている。栄養価を壊さないように調理したオーガニックの食材を手軽に食べてもらえるよう、今後たくさんの食品を作って広めていくことが夢です」と話す。
 ふるさと納税で出品している「ベジカレーセット」は、カフェでも人気のメニュー。おすすめポイントは、焼き野菜がボリュームたっぷりで、素材の味を味わえること。カレールウの材料の野菜と焼き野菜は季節によって変わり、大人も子どもも安心・安全においしく食べられる一品となっている。

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ボリュームと栄養たっぷりのベジカレーセット。(※ふるさと納税で出品のベジカレーセットにはご飯は付きません)

「オーガニック」ということ

「この畑にいて一番嬉しい瞬間は、野菜たちが自由に生き生きと育っている姿を見ること。それを収穫し、食べられることに感謝だね」と、梅本さん。昨日よりも今日、今日よりも明日と育っていく野菜たちを見て、農場の仲間と仕事をすることが喜びだと感じている。また野菜作りと同様に、子どもたちが本当に必要なものに触れ、多様な発想を大切にし、それらを将来それぞれの形で表現できることを、梅本さんは心から願っている。「それは自然な想いであり、特別なことではないはず。それが、私が考える『オーガニック』ということ」
 そんな想いを共有する仲間たちと共に、今日も梅本さんは畑を耕している。

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(株)ビオ・ラビッツの農場部門、カフェ部門のみなさん。いつも明るい笑い声が飛び交う。

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